高年収でも生活が裕福とは限らない(写真映像部 和仁貢介)
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 厚生労働省の調査によると、世帯年収が1500万円以上は全世帯の3%ほどだ。ただ、お金に余裕があるように見えても、富裕層になりきれない「プチ富裕層」は使い道を吟味しないと、資産が増えずに老後にも不安を抱えることになりかねない。

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 首都圏に住む40代の夫婦はともに大学で働く。世帯年収は2人で年1700万円と一般家庭よりも裕福な部類に属する。それなのに貯蓄はほぼゼロで、最近の収支は赤字という。なぜこれほど窮地に追い込まれているのか。

 夫婦には、小学生と中学生の子どもがいる。昨年、上の子を私立の中学に入れたいと思い、進学塾に年100万円以上を費やした。子どもの時にいろんな経験をさせてあげたいと家族旅行も欠かさなかった。

 さらに、たばこ、化粧品、ランチ、エステなど、夫婦ともに嗜好品や付き合いには、ためらうことなくお金を使った。

 その結果が、気づいたら貯蓄はほぼゼロで収支も赤字というありさまだった。

 昨秋、この夫婦から相談を受けたファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さんは、「子どもの教育が終わったとき、大変なことになりますよ。資産形成を並行してやるべきです」と助言した。

 教育機関で働くだけに、子どもたちの教育にはとりわけ重きを置いているようだったので、教育費を削るようなアドバイスはあえて避けた。見直しを求めたのはお小遣いの使い方だ。好きなタイミングで自由に使うのではなく、毎月いくら、毎年いくら、というように使っていい金額を固定化するよう助言した。

 家族旅行についても、家計を気にすることなく行くのではなく、事前に計画を立てて旅行だけのために貯蓄を別にすることも勧めた。

 塚越さんは「例外もあるが」と言いながらこう話す。

「ご自身が私立だと、子どもを私立に入れる方は多いようです。また、親に出してもらって進学してきた方は、やはり教育にお金をかけるのが当たり前になっていて、当然、家計の中で教育にかける支出の割合は高くなる傾向があります」

 今年に入って相談を受けた別の夫婦も共働きだ。40代で世帯年収は1850万円だった。しかし、貯金は350万円と高収入の割には少なかった。

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