崔真淑さん
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「プラザ合意の再来」──。そんな噂が市場でささやかれています。1985年、ドル高を是正するため、アメリカが日本や欧州と協調して通貨介入を行った歴史的な出来事がありました。その現代版として再び浮上してきたのが、ドナルド・トランプ米大統領の経済チームが描く「マールアラーゴ合意」です。果たしてこの構想は現実味を帯びているのでしょうか。そして、実現した場合、どんな影響が広がるのでしょうか。

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 トランプ氏の貿易政策は一貫性に欠けると批判されがちですが、その背後には意外と緻密な戦略が潜んでいる可能性があります。実際にその青写真を描いているのが、経済諮問委員会(CEA)委員長スティーブン・ミラン氏です。

 ミラン氏は2024年11月に発表した論文「グローバル貿易システム再構築のためのユーザーズガイド」の中で、ドル高がアメリカの製造業を圧迫し、経常赤字を膨らませていると分析しました。その論拠には、経済学者ロバート・トリフィン氏が1960年代に唱えた「基軸通貨ジレンマ」があります。つまり、世界がドルを準備通貨として保持し続ける限り、アメリカは赤字を出し続け、ドルは過剰に評価されるという構造です。

「ブラフ的な関税政策」

 注目すべきは、ミラン氏が関税を通貨戦略の“レバレッジ”として使おうとしている点です。通常、関税の引き上げは輸入減を通じてドル高を誘発し、輸出には逆風となります。しかしミラン氏はそれを逆手に取り、関税をちらつかせて、各国に協調的な通貨政策をのませるという、いわば「ブラフ的な関税政策」を展開しようとしている可能性があります。

 この点について、英フィナンシャル・タイムズも明確に言及しています。今年3月の記事では「関税はドル高要因だが、グローバル合意を引き出すための交渉手段として使われている」とし、“tariffs should also be used as a weapon in bargaining for a global deal(関税は、世界的な合意に向けた交渉の武器として使われるべきだ)というミラン氏の考えを紹介しています。つまり、関税は本命ではなく、通貨合意こそが狙いかもしれないのです。

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