バブル絶頂期、フジテレビがテレビの「お笑い」を牽引していくなかで、男たちのおふざけとして繰り広げられる女性へのイジメは、視聴率の良さで正当化されてきた。フジテレビ“だけ”の責任ではないが、フジテレビが成功させてきた文化は、私たちの社会を深く傷つけたのかもしれないと、今になって思う。少なくとも、若い女だった私は、傷ついていた。「傷ついた」という自覚もないまま、テレビの前で固まっていた自分を思い出す。セクハラ時代の目撃者でありながら、“私たち”は被害者でもあったのだ。
テレビを安心して観たいと思う。正しいものを観たい、のではなく、刺激的で新しくておもしろくて楽しいものを、安心して観たいと思う。それはつまり、テレビを信頼したい、ということだ。SNSで流れてくる過去の「暴力映像」を見ながら、これがさすがに今の時代ではできないという共通認識が生まれていることに時代の変化を感じながらも、女性たちの信頼を失ったメディアが取り戻すべきものは、あまりに大きい。

