AERA 2025年3月24日号より

金が2年ごとに1位

 表の年別リターンの王冠マークを目印に見るとあることに気づく。19年以降、金とS&P500が交互に1位なのだ。

【19年以降の1位リターン】

19年…S&P500 30.2%

20年…金 18.5%

21年…S&P500 43.5%

22年…金 14.4%

23年…S&P500 35.8%

24年…金 39.9%

「S&P500が飛び抜けた翌年は金が来ている。新たなアノマリーといいますか、投資家の動向が何らかの影響を与えている可能性は十分にあります。運用成績に敏感な投資家の間で最近、急激に売れ始めたのが『Tracers S&P500ゴールドプラス』です。レバレッジをかけてS&P500と金先物にそれぞれ100%、純資産総額の200%まで投資します」

 直近の年間リターンは67.6%(25年1月31日現在)、信託報酬0.1991%(税込み、年率)。値動きは荒い。レバレッジ系のため新NISA対象外だが、上級者向けとして売れているのは納得。1月24日には「Tracers NASDAQ100ゴールドプラス」も設定され、発売2週間で純資産総額150億円を突破した。

「初心者は、このゴールドプラスではなく普通の金のインデックス投資信託をS&P500や全世界株式と併せ持つ作戦も一考の余地ありです。ここ6年はS&P500と金が交互に成績がよかったわけですし、株式と金は別の資産ですから本来の意味での分散投資にもなります」

 金のインデックス投資信託でメジャーなのは「三菱UFJ 純金ファンド」信託報酬0.99%。コストが安いのは「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド」同0.1838%だ。

「ご存じの通り、金は非常時に強い。表の08年はリーマン・ショックの年ですが、S&P500▲48.9%、全世界株式▲52.8%と半減したところ金は▲15.4%でした」

 08年の当時、上原さんは運用会社で資産全体を見る部署にいた。リーマン・ショック時は株式全般が雪崩を起こし、消去法的に債券へ資金が向かった。この年の1位は国内債券3.4%である。リスク回避の動き。

「11年は東日本大震災の年でS&P500▲3.2%、全世界株式▲11.7%、それ以外の株式もボロボロの中、金はプラス3.3%で1位でした。このときは一部の電力債がクラッシュし、株もダメ、債券もイマイチということで金に向かった」

 金のリターンは米国株に及ばないが、長期(21年間)で見れば前述の通り817%とS&P500の次に優秀である。

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日本株輝いた13年