零売薬局のメリットとは

 ただ、規制強化の動きの一方で、零売のメリットを訴える声もある。

 ▽医療費削減につながる▽病院で処方される薬より安い場合があり、経済的負担が軽減する▽どうしても医療機関に行けないときに助けてもらえる、などだ。

 コロナ禍で病院の密を避けたい人のニーズをつかんだ、などと肯定的にとらえる報道も過去にはあった。

「デリケートな部分の病気が再発し、(過去の)受診時に処方された薬を買いに来た女性も複数います。医師に見せることへの心理的抵抗がどれほどかは、ご本人でなければわかりません」(前出の零売薬局の薬剤師)

 人により抱える事情はさまざま。零売薬局がなくなったら困る人もいるはずだ。

なくさないほうがいい

 法改正がなされた場合、果たして零売薬局はどうなるのか。

 厚労省の担当者は、「完全になくすということが目的ではありません。あくまで、許容される範囲を明確化することが趣旨です」と、健全化が目的だとする。

 大嶋教授も、「望ましくないことではあるが、安全性の確保があれば、利便性や医療費の観点から、(零売は)なくさないほうがいいもの。オールオアナッシングにはできないでしょう」と推察し、こう続ける。

「薬剤師が本来の姿に戻ることがもっとも重要なこと。患者のことをしっかり把握し、指導やフォローアップを丁寧にできる薬剤師がいる薬局なら、零売という方法もあると思います。逆に、売らんがための『調剤マシン』になった薬剤師しかいない薬局は、零売であろうとなかろうと、生き残れないと考えています」

(ライター・國府田英之)

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