齋藤飛鳥(写真:アフロ)

アイドルらしいアイドルになれない

「乃木坂46の絶対的エースだった齋藤は、メインキャラクター『アイ』との共通点も多いのですが、『齋藤飛鳥はかわいらしすぎてちょっとイメージと違う』など、たくましくしたたかな面と、間の抜けたおちゃめな面を併せ持つアイとマッチしないのではないかという指摘も少なくありません。キービジュアルのコスプレ感が強かったこともあり“安っぽさ”を指摘するファンもいました。2018年にヒロインとして出演した映画『あの頃、君を追いかけた』では、クラス一優等生の美少女を演じた齋藤ですが、そのイメージが強かったのかもしれません。ただ、齋藤にとっては俳優としてのポジションを確立したい大切な時期。このタイミングであえて自分の持ち味とは違うタイプのアイドルに挑戦したことは興味深い。単なる自分の経験への回帰や再現ではなく、新たな表現を目指す決意が感じられます」(アイドルに詳しいライター)

 アイドル時代には、密着番組で自らのキャラクターについて「根っからのアイドルじゃない」「暗いねってよく言われる」「乃木坂46に入っていなかったら相当なクズになっていた」と語っていたこともある齋藤。そんなところも“天才的なアイドル様”と呼ばれるアイとは真逆だと指摘される部分かもしれない。

「齋藤は乃木坂46をけん引する存在でしたが、そのポジションを得るまでにはかなりの苦労があったようです。一期生最年少メンバーとして、当初は妹系の甘々キャラを狙いましたが、なかなか選抜メンバーにはなれないままアンダーとして苦汁をなめました。その後、自らの“素”を生かした毒舌・クールキャラへ転身してブレークし、絶対的エースとして君臨することになりました。齋藤のアイドルとしての10年間は、徹底的に自分を客観視し、自ら設定した理想像を目指す連続でした。『アイドルらしいアイドルになれない』と自覚したことが、“齋藤飛鳥”という存在を唯一無二のセンターへと導いたのではないでしょうか」(同)

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虚実ないまぜのアイドル像