友「それじゃ、勉強するヒマなんかねーな」

私「ねーよ」

 そんな会話をしながら志望大学の最寄駅まで行ったような気がする。

 芸術系の大学なので、受験生はみななかなか洒落た格好の学生が多い。我々は「ファッションセンターしまむら」の広告から飛び出してきて5年間は着の身着のまま……のようなイデタチだ。

私「(周りを見て)なんだよ、ふざけやがって」

友「ふざけてはないだろ。がんばってるんだよ」

私「がんばってるのか?」

友「そうさ」

私「くだらねえ、そんなガンバリ」

友「いーじゃないの。みんながんばってんだから」

 友だちは「大学生の余裕」を見せていた。ちくしょう。

 キャンパスに着く。合格発表の掲示板は門をくぐってすぐの場所に立っていた。

「お前を殴る!」

私「行くか」

友「行くか」

私「ダメだったら、お前を殴る!」

友「なんでだよ! 早く見てこい」

私「そんなに殴られたいか?」

友「殴られたくないよ!」

私「じゃあ殴らない。けど、許さない!」

友「何をだよ? 意味がわからないよ。じゃあ一緒に行くか?」

私「それじゃオレが臆病者みたいだろ?」

友「(臆病者)じゃなかったら、オレを誘わないだろ?」

私「頭きた! やっぱり殴る! いま殴る! 思い切り殴る!」

友「ここでオレを殴ったら、合格してても取り消しになるぞ。みんな見てるんだから!」

私「むー。じゃとりあえず、見てくる。ダメだったら殴る。ダメは取り消しにならんからな!」

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「あー。また連絡する」