登山やハイキングはいまやすっかり中高年の趣味になった感があるけれど、そのせいなのか山の遭難も後を絶たない。『やってはいけない山歩き』の著者・野村仁氏はいう。〈現在、山の遭難は史上最も多い状況が続いています〉。
 遭難とは、なんらかの事情で警察や消防に(ときには家族や山岳会を通して)救助要請があった事態のこと。全国で1年間に発生する遭難事故は約2500件。約3千人が遭難し、うち298人が死亡、37人が行方不明(2015年)。とうてい無視できない数字だけれど、半面、死亡事故は史上最低で、90%は救助される。
 つまり転落や滑落のような深刻な遭難は減り、〈「転倒」「道迷い」「疲労」のような、いわば“軽い遭難”が中心になっているのが、現代の遭難状況の特徴なのです〉。
 そ、そうなのか。「軽い遭難」が増えているのはたとえば近頃人気の高尾山や富士山だ。高尾山で起こっている事例の多くは「疲れて歩けない」「足が痛くて歩けない」「子供がはぐれてしまった」といったトラブルで、救急車を呼ぶのに近い感覚で救助を求める。それでも消防署の山岳救助隊が出動して対応すると「山岳遭難」にカウントされてしまうのだ。
「危なっかしいのは…こういう人です」と題して本書が紹介する例は「それはワタシのこと?」と思わせるような人ばかり。登り始めが遅すぎる人(9時すぎに出発する。登山の開始時間は7時前が理想)、計画を立てず自由に登る人、ネット情報だけで出かける人、地図を持たずに出かける人(2万5千分の1の地形図より登山地図を)、素性のわからない相手と登る人、「遭難なんてしない」と思っている人、遭難しかけているのに認めない人、一見冷静だが安全かキケンかわからない人……。ひえ~!
 計画の立て方、歩き方、服装や持ち物。事故を未然に防ぐのはなべて自分の心掛け。〈「スマホやネットがあるから、まぁいいか」は危険すぎます〉〈歩いているときは、絶対に転んではいけない──これは登山の鉄則です〉。ほんとですよね。みなさまもお気をつけて。

週刊朝日 2016年11月4日号

[AERA最新号はこちら]