
先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください(この記事は「AERA dot.」で2025年2月27日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)。
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昨年末、地球の近くを通過する小惑星「2024YR4」が発見された。確率は低いが、7年後の2032年、地球に衝突する可能性を完全には否定できないという。
発見から8時間後に追跡観測
小惑星「2024YR4」は昨年12月27日、南米チリにある「小惑星地球衝突最終警報システム」の望遠鏡で発見された。
発見からわずか8時間後、NPO日本スペースガード協会に所属するアマチュア天文家・井狩康一さん(68)は、滋賀県にある守山観測所で2024YR4の追跡観測に成功した。
「公表された暫定的な軌道データをもとに、小惑星の位置を割り出し、27日夜11時ごろ望遠鏡を向けて撮影しました。当時はまだ、『ただの小惑星』で、ああ、写ったな、という感じでしたね」(井狩さん)

世界中の天文台から観測データが集まると、2024YR4の軌道が次第に明らかになってきた。
今年1月16日、米航空宇宙局(NASA)は、2024YR4の軌道を詳細に分析した結果、2032年12月22日に地球に衝突する可能性があると公表した。当初、衝突の確率は1%程度とされたが、観測データの増加とともに、2月18日時点で確率は3.1%まで上昇した(現在は0.1%以下に減少)。
1月29日には、国際小惑星警報ネットワーク(IAWN)から「小惑星衝突の可能性に関する通知」が出された。
通知によると、2024YR4の直径は40~90メートルで、衝突のリスクがあるのは東太平洋からインド、アフリカ、中南米にかけての帯状の地域だ。万が一衝突した場合の被害レベルは、「深刻な爆発被害が生じる」。
日本スペースガード協会の浅見敦夫副理事長によると、「IAWNからこのようなアナウンスが発出されるのは、今回が初めて」だという。
7.7メガトンの破壊力
ごく小さな小惑星が地球に衝突する事態は、実は度々起こっている。昨年は少なくとも4回、小惑星が地球に衝突した。
たとえば、昨年9月4日に発見された小惑星「2024RW1」は直径1~2.5メートル。衝突しても被害が生じる可能性は低いと推定された。発見から約11時間後、フィリピン・ルソン島付近の上空で大気圏に突入した。この小惑星の観測には、井狩さんも加わった。
「発見当初から地球に衝突することがわかっていたので、かなり興奮して観測しました。中国の天文台もずっと追跡していた」(井狩さん)
だが、2024YR4はこれよりはるかに大きな小惑星だ。大気圏に突入すれば、形を保つことができず、地表から30~40キロで爆発的に崩壊すると浅見さんは推測する。
「衝撃波は広範囲に及び、隕石が降り注ぐでしょう。被害は1908年にロシア・シベリアで発生した『ツングースカ大爆発』を上回るかもしれません」(浅見さん)
ツングースカ大爆発は、直径50メートルほどの天体が大気圏に突入した際に起こったと推定される。東京都とほぼ同じ面積の約2000平方キロにわたって樹木がなぎ倒された。
NASAによると、2024YR4の衝突のエネルギーは、TNT火薬に換算して7.7メガトン。広島に投下された原子爆弾「リトルボーイ」(15キロトンとした場合)の約510倍にあたる。