ジャパンラグジュアリーの創出、という新たな日本文化の創造に今回の試みがつながっていくのはもちろんのこと、このままでは消えてしまいかねない、日本ならではの文化、伝統を守り、新たな形で発展させていくことにつながっていくと考えています。

――あまりのセンスの良さに海外ブランドだと思っている人もいるくらいですね。持った瞬間に品質の良さが分かりますし、カラーも日本製ではなかなか見かけない深さがあります。

山本 バルコスは、歴史は浅いですが、品質は日本の最高品質だと思っています。海外で展開していますから、雑なものは相手にされないんです。実はウチは製造工場を持っていません。製造は一部日本製ですが、海外の信頼できる工場に発注しています。

 ただ、サンプルだけを作る自社工場を中国に作りました。サンプルだけです。月に500個作れるようになっています。これが他社と違うことです。

 製造工場は、ラインを止めてまでサンプルを作るのを嫌がりますから、細かい修正に応じてもらえない場合がありますし、急ぎの仕事が頼みにくい。サンプル専門ならレスポンスも早いし、ポケットをあと何ミリ下げてもう1回作って、などの注文にも素早く対応できます。

 OEMの場合、速さは大変有利になります。他社ではやれないことです。自社ブランドでも、サンプルをモニターしてもらって納得がいくまで何度でも作り直すことが当たり前にできる。だから僕らは、すべてのバッグにかなり愛着がありますよ。サンプル作りって本当に大切で、そのコストは研究開発費だと思っています。

 この、完成度が高いサンプル作りもバルコスの付加価値のひとつ。これができるブランドはないです。サンプルを見せれば、どのレベルの仕事ができるかプロはわかる。だから商談も早い。世界各国から注文が来ますから、言葉よりサンプルを見てもらったほうがわかりやすいですしね。

●今の日本の若者はヨーロッパ人に似てきた

――倉吉を鯖江や今治のようにしようというお考えですか?

山本 倉吉をメガネの一大産地、福井の鯖江のようにしたいなど壮大なことは思っていません。鯖江には元々生産者が多く集まっていて、技術力が高かったから世界から発注が来て鯖江ブランドができて町が発展した。タオルの今治(愛媛県)もそうです。

 でも、倉吉にはバルコスがあるだけで、バッグの製造者はいない。成り立ちが違う。僕は企業城下町を作るより、発注する側でいたいんです。バルコスが有名ブランドとして世界で認められることで、結果的に倉吉にスポットが当たって、人口や観光客が多くなればいいですね。実際、最近は倉吉の本社にわざわざ買いに来てくださるお客様もいます。このなんにもない田舎に、よくお越しくださったと感激しますよ。本当になんにもないところなんですが、僕は結局好きなんですよねぇ、倉吉が。

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