「太平洋の真ん中を泳いでいたら、自分より年上の部下が、波間から、『上官殿、刀は持っております!』と言って、軍刀を頭の上に掲げたのを見て、池部さんは思わず泣いてしまったんですって。自分が身の安全のために残してきた軍刀を、部下はむちゃを承知で持ってきてくれた。その部下の忠誠心に、胸が張り裂けそうになった、と。でも、『海の中だから、涙は見せずに済みました』と付け加えていたのも、池部さんらしいなと思いました」
以来、「戦争体験を次の世代に伝える」という使命のもと、戦争の話をしてもらうことは、「徹子の部屋」の夏の恒例企画になった。
「戦争について語っていただいたほとんどの人がもうお亡くなりになっていますが、本当に、さまざまな体験を伺っているので、戦争資料としても貴重なものになっていると思います」
「徹子の部屋」はあと3年で50周年を迎える。以前はよく、「50年続けることが目標」と発言していたが、最近は「100歳まで続けたい」と思うようになった。
「長く続けてきて、改めて『人間には、誰にも面白い話があるものだなぁ』と実感しています。人間、生きている限り、『話』は増えていくものです。まだまだ、ゲストの方から、『徹子の部屋』に出たいとか、ぜひこんな話を聞いてほしい、と言っていただけているので、好奇心の続く限り、皆さんのお話を聞いていきたいと思っています」
(菊地陽子 構成/長沢明)
※週刊朝日 2023年6月9日号
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