米IT大手のグーグルは、マイノリティーからの採用を増やすという目標を廃止した。さらにグーグル・カレンダーで以前は自動的に表示されていた「黒人歴史月間」「(LGBTQの権利の)プライド月間」「ヒスパニック月間」が消えた。ディズニーは動画配信サービスで配信する過去の人気アニメーション映画で、人種差別的な表現に対する警告文の自動表示を消した。
米金融機関ゴールドマン・サックスは、多様性を求める規則を廃止。新規公開株式(IPO)を発行する企業に対しても、女性職員・役員、人種的マイノリティーの比率を上げるように助言したり、公開したりすることはしない方針に切り替えるという。
LGBTQの子を持つ両親「支援受けられない」と涙
DEIプロジェクトをやめる企業には、小売世界最大手ウォルマート、量販店大手ターゲットとロウズや、マクドナルドも含まれ、女性や黒人などの幹部昇進、中小企業やマイノリティー関連ビジネスの商品の取引を縮小、あるいは見直しをする。いまや情報源やコミュニケーションのアプリとして欠かせなくなったフェイスブックやインスタグラムを保有するメタ、オンライン小売世界最大手アマゾンも、DEIから正式に離脱することを発表。米国の若い人の間では、フェイスブックやインスタグラム、アマゾンの利用をやめる動きも強まっている。
17日のデモに参加した人々は直接的・間接的にこのDEI撤廃の影響を受けている。ジェンダーや性的、人種的マイノリティーだけでなく、マジョリティーとされる白人市民もダメージを受けることが分かる。
「クリニックで体が不自由な人の相談支援をしているが、政府からの支援がなくなり患者が来なくなる」(病院勤務)
「(トランプ氏の移民強制送還政策で)うちの小学校の移民の子どもの出席率が悪化している。学力の支援をしたいのに、登校してくれないと何もできない。担任するクラスの6、7歳の子どもがなぜこんな目に遭わなくてはいけないのか」(小学校教師)
「LGBTQの子どもを持つ父母が、相談や医療費の支援を受けられなくなると涙で訴えてきた」(美術教師)
「女性支援ということで受けてきた助成金が打ち切られて生活に困っている」(アーティスト)
民主主義の旗振り役とされてきた米国は、トランプ政権による、法的根拠に欠ける独裁、寡頭制に支配され始めた。マスク氏という世界一の富豪がそれを推進し、対価を払わされるのは、国民、という構造になっている。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)
※AERA 2025年3月3日号より抜粋