将棋の第74期王将戦七番勝負第4局で勝ち、感想戦で笑顔を見せた挑戦者の永瀬拓矢九段=2025年2月16日、大阪府高槻市
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年3月3日号より。

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 藤井聡太王将(七冠、22)に永瀬拓矢九段(32)が挑戦するALSOK杯第74期王将戦七番勝負。第4局は2月15、16日に大阪府高槻市でおこなわれ、永瀬九段が124手で勝利。3連敗のあと1勝をあげ、カド番を一つしのいだ。

「1勝返せれば、もう1局指せますので。そういうモチベーションで準備をしていました」(永瀬)

 本局、後手の永瀬は、藤井が得意とする角換わりを正面から受けて立った。44手目に玉を寄った手が永瀬の工夫。以後は藤井が慎重に時間を使う進行となった。戦いが起こったあとも形勢はバランスを保ったまま進んでいく。藤井は最善に近い手を指し続け、終盤に入った時点では、わずかにリードしたかに見えた。

 93手目。藤井は永瀬玉の上部に銀を打つ。セオリー通りの寄せのようでいて、結果的にはこの手が敗着となった。永瀬は歩を打って、以後も正確無比の受けを続ける。

「ダメになってしまったかなという感じがしました」(藤井)

 永瀬は自玉への寄せをしのいだあと、反撃に転じる。最後はぴったりと藤井玉を詰ませて、大きな1勝を返した。

 藤井は2日制のタイトル戦において、2021年度王位戦第3局から本局に至るまで、先手番で32連勝中だった。終局後、その記録がストップした点に関して記者から問われると、自身の記録に頓着しない藤井は、苦笑した。

「いや、それは全然知らなかったんですけど。本局に関して言うと、全体的には難しいかなと感じていたので。やっぱり最後、崩れてしまったというところは残念に思っています」

 王将戦七番勝負における藤井の連勝は、9で止まった。恒例の勝者撮影は久々に藤井以外の棋士が臨んだ。永瀬は笑顔で主催者側の求めに応じ、終局直後にはタコ、翌朝にはカメの格好をさせられていた。(ライター・松本博文)

AERA 2025年3月3日号

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