たうち・まなぶ◆1978年生まれ。ゴールドマン・サックス証券を経て社会的金融教育家として講演や執筆活動を行う。著書に『きみのお金は誰のため』、高校の社会科教科書『公共』(共著)など

「日本は投資に回るお金が少ない」と言われている。TSMC誘致のように産業活性化に貢献する大規模投資は結構なのだが、子どもたちの学びや教育への投資をおざなりにしては、長期的に見て日本社会の先行きが心配になる。教育こそ、いずれ大きなリターンを生むとされる投資先の代表格なのだから。

 経済協力開発機構(OECD)や世界銀行の調査などでも、教育への投資が将来的に高いリターンをもたらすという結果が何度も示されている。もちろん「中身」が重要で、ただお金をかければいいわけではない。しかし肝心の先生が不足していては、教育の質以前に、教室を回すだけで精一杯という事態になりかねない。

 地方創生も、デジタル推進も大事だけれど、学校現場の土台が崩れたら持続的な発展は難しいだろう。いずれにせよ、先生の給料や待遇が改善されないと、若い世代が教員を選びにくい状態は続く。TSMCなどの投資が生む経済効果を、教育にも循環させる仕組みが必要かもしれない。

 改めて思う。いまの日本で、本当に投資すべきは何だろう? 半導体や先端技術に投じることは重要だが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に人や教育への投資を強化しないと、将来世代を支える基盤が脆くなるのではないだろうか。本の教員不足の話は、その危機感を象徴していると感じた。

AERA 2025年2月24日号

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