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育児も仕事も両立して管理職になる女性が「ロールモデル」のように扱われる社会において、“それ以外はマイノリティー”のように感じさせてしまうことも。女性の生き方の多様性について専門家の見解は。AERA 2025年2月24日号より。
【図を見る】1部上場企業に総合職として勤める「均等法第1世代」の女性の現状はこちら
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著書に『等身大の定年後 お金・働き方・生きがい』があるジャーナリストで近畿大学教授(労働政策・ジェンダー論)の奥田祥子さんは「女性活躍推進法によって女性の管理職登用が進んだことは良いこと。ただ、『仕事と子育てを両立し、管理職になる女性』が“生き方の規範”になると、そこから外れる人が苦しい思いをする」と話す。
東海地方で公務員として働く女性(54)は、「結婚、出産をして働いている人は全部持っている。でも私は何も持っていない。ただ働いているだけだと感じてしまう」と苦しい胸のうちを明かす。
職場にいる女性のうち、独身は自分だけ。他はみな子育て中で、職場で子どもの話をされると「つらくて息がつまる」。幼い子を持つ年下の女性上司を周囲が気遣っているのを見ると「私もすごく大変なんだけどな」と心がうずくという。
女性は要介護認定を受けた高齢の父を自宅で介護している。育休に比べると介護のための制度は整っていないため、有休を使わざるをえないことも多いという。「同情してほしいわけじゃないけど、私だってカバーしてほしい時があるんです」とこぼす。
いま、子育てに関連する制度が整い、女性の周囲でも育休を取る男性が増えた。企業や自治体の採用ページでは、仕事と育児を両立している社員や職員が紹介されていることが多くなった。育休取得後に職場復帰したり、育児をしながら時短で働いたりしている人のコメントや1日のタイムスケジュール。保育園に預けてから出社する様子の写真……。
目指すべき「ロールモデル」かのように紹介される人たちを目にすると、自分とはかけ離れた生活だと感じて落ち込んでしまうという。育児をしながら働きやすい環境が整ったことに伴い、独身者にとっては働きづらくなったようにも感じているという。
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