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始皇帝の曽祖父の昭王(昭襄王)を支えていた豊富な人材は、祖父・孝文王、父・荘襄王を超えて、そのまま秦王嬴政へと引き継がれた。わずか三日天下の孝文王と、在位三年余りの荘襄王の二代の治世はきわめて短いので、昭王から秦王嬴政へと人材が直接継承されたことは大きい。
王齮(始皇三年死去)と蒙驁(始皇七年死去)の二人の昭王の将軍は、嬴政が即位してまもなく亡くなるが、その老将軍としての技量は若き秦王を支え、さらにその技量は次の世代の若い将軍たちに伝えられた。とくに斉人蒙驁の将軍としての才能は、蒙武・蒙恬といった子と孫の一族に受け継がれた。それは秦人の王翦(おうせん)、王賁(おうほん)、王離(おうり)の三代将軍でも同様であった。こうしたことは、秦に敵対した東方六国の将軍には見られないことである。
《朝日新書『始皇帝の戦争と将軍たち』では、趙をはじめ六国滅亡の経緯を詳しく解説。「キングダム」の主人公「李信」は史実でどう動いたのか? 将軍・騰(とう)をめぐる最大の謎とは?さまざまな名将軍たちの活躍を詳述している》
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