ただ、そうは言っても上述したGantchev 博士とGiannetti 博士 の研究では、長期的に同社の株価が高く伸びる可能性も示唆しています。というのも、株主提案が可決されなくても、企業経営に圧力を与え、ガバナンス改革を促す可能性があると指摘されています。特に、賛成票が30%以上集まる場合、経営陣は株主の意向を無視できず、ガバナンス改革を検討せざるを得なくなる傾向が報告されています。

顧客利益に対するコミットの真剣さ

 これらの要因を踏まえると、フジ・メディアHDの株価は以下のような推移をたどる可能性が高いと考えられます。

  1. 短期的な株価上昇:株主提案への期待感が高まり、株価が急騰。
  2. 株主提案の可決が厳しく、株価下落:実際の可決率が低いため、期待と現実のギャップにより株価が調整される。
  3. 中長期的な株価回復:株主提案が可決されなくても、経営陣が圧力を受け、ガバナンス改革が進むことで、企業価値向上につながる。

 長期的に株価上昇を期待する声は大きくなるかもしれません。しかし、何度も言いますが、途中で著名投資家やアクティビストが売り抜けている可能性があるのはご留意ください。私は昨年11月にダルトンの創業者の方と、産経新聞社のイベントでお話しする機会をいただきました。日本の上場企業におけるガバナンスへの指摘は非の打ち所がない真っ当なものでした。そして、顧客利益に対するコミットの真剣さも感じました。その真剣さが、彼らの株式売買にどう影響するのか注目しています。

(注1)
「The Costs and Benefits of Shareholder Democracy: Gadflies and Low-Cost Activism」
Nickolay Gantchev,Mariassunta Giannetti
https://academic.oup.com/rfs/article-abstract/34/12/5629/5976977

(注2)
「Hedge Fund Activism, Corporate Governance, and Firm Performance」
Alon Brav,Wei Jiang,Frank Partnoy,Randall Thomas
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1540-6261.2008.01373.x

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