しかし、これはあくまでもアメリカの結果です。日本においては、私が取得可能な2020年までのデータで見ると、株主提案全体の平均可決率は1%未満となっていました。それだけ株主提案が可決される確率は極めて低いのです。しかも、外資規制がされている上場企業になれば、もっとハードルが高いでしょう。
世論を味方につける
もちろん、フジ・メディアHDに関しては、違う!という声もあります。著名な個人投資家やアクティビスト投資家の動きがあり、特に米投資ファンドのダルトン・インベストメンツがガバナンス改革を求める公開書簡を送付しました。ダルトンは、経営陣の意思決定プロセスの透明性向上や、株主価値を高めるための改革を求めています。このような動きは、市場に期待感を与え、株価を押し上げる要因となっています。近年の研究では、アクティビスト投資家のリアルな現実も報告されています(注2)。最近のアクティビストは従来の「議決権51%の取得による経営支配」よりも、メディアや世論に働きかけることで経営陣に圧力をかける戦略を重視していることが指摘されています。ダルトンも、経営陣に直接プレッシャーをかけるだけでなく、世論を味方につけることで改革を推進しようとしていると考えられます。
一方で、51%を取る気がないならば、こうした世論に訴え株価が上昇したところで、途中で売り抜けるだけに終わる可能性もあるでしょう。アクティビストや機関投資家の使命は、顧客に対して投資リターンを提供することなのです。ガバナンス改革は難しいとなれば、株主総会前には売り抜けていたということも十分考えられるのです。