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AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
「一番、こだわったのはタイトル。旅がなければ、私のチャイは生まれなかったから」と著者である吉池浩美さんが話す通り、ネパールやインド、東南アジアの旅から生まれたチャイや焼き菓子のレシピと共に、思い出の日々がエッセイと写真、イラストで丁寧に綴られる。人々との交流や目にした景色、土地の匂いまで伝わり、チャイを作りたくなる一冊『旅のち、チャイ』。吉池さんに同書にかける思いを聞いた。
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マサラチャイ、ネパールラム酒・シナモンチャイ、フェンネル・オレンジチャイ──。
ページをめくるたびにスパイスが香り、紅茶をミルクで煮出すチャイの深い味が口のなかに広がるよう。そんな吉池浩美さん(50)のオリジナルレシピで味わう仮想ティータイムのお供は、吉池さんによる写真とイラストもたっぷり盛り込まれた旅日記。ネパールやインド、スリランカなど、アジアで暮らす人々の笑顔や風景、街のにぎわいが生き生きと鮮やかに伝わってくる。
吉池さんは長野県東御市でチャイと焼き菓子の店「mimiLotus」を営む。忙しい本業の傍ら、2017年からネパールやインドなどの街中でチャイを淹れ、道ゆく人に振る舞う旅を続けてきた。初の著書は、その思い出と旅から生まれたレシピをまとめた。
「書きためてきた旅の思い出とレシピを一冊の本にしたいという願いがかないました」
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吉池さんがチャイに出合ったのは、中学生のとき。学校や社会に馴染めず、引きこもっていた頃、両親の勧めで親戚が住むネパールへ旅立った。
「エベレスト山群を目にしながらのトレッキングは厳しかったけど、シェルパが淹れてくれるチャイに衝撃を受けました。甘ったるくてちょっとスパイシーで、お世辞にもおいしいとは言えません。でも、私にたくましく生きるエネルギーをくれたんです」