美しい景観を生み出す農家の思いを観光客に伝える看板と設置メンバー(前列右端は中西敏貴さん)。背後に伐採されたシラカバ並木が写る=中西さん提供

観光立国の理念に立ち返れ

 町として観光客対策も打ち出してきた。

 美瑛町によると、23年に一番人気の観光スポット「白金青い池」などに設置した「侵入検知カメラ」が効果をあげているという。立ち入り禁止エリアへの侵入が検知されると、画像が町と観光協会に送信されるほか、日本語と外国語で警告音声が流れる。観光客の「捨てぜりふ」に嫌な思いをすることもない。

 同町は昨年10月、この池に駐車場利用税を導入する方針を決めた。駐車場利用者から一定額を徴収し、それを観光客対策などに充てる。道内初の試みで、26年度の導入を目指す。

「対策の財源がない、という自治体は少なくない。宿泊税や入域料を取るなどの受益者負担を進めるべきです。温泉旅館は入湯税を毎日徴収して、処理している。他の宿泊施設が宿泊税の徴収・処理をできないはずがない」

東教授は、国がインバウンドを増やすことばかりに注力して、受け入れ限度を超えてしまった地域への対策支援が不十分であると指摘する。

「国は、『住んでよし、訪れてよしの国づくり』という観光立国の理念に立ち返って対策を進めるべきです」

国がアピールしてきた「おもてなし」のひずみが、全国各地で表面化しつつある。その現実に目をむけるべきだ。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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