ローソン河口湖駅前店を背景にポーズをとる外国人観光客=富士河口湖町、米倉昭仁撮影

毅然とした姿勢を取るべき

立教大学観光学部の東徹教授はこう指摘する。

「国や多くの自治体は『観光』に対する認識が甘すぎる。『市民生活を侵すような観光は認められない』という毅然とした姿勢を取るべきです」

 東教授によると、美瑛町と同様に観光による不利益に悩まされるケースは、京都市をはじめ、神奈川県鎌倉市、山梨県富士河口湖町など、他の地域でも起きているという。

「私有地への侵入、車道での撮影や無謀な横断による通行の妨げや接触事故のリスクなど、市民が不利益を被っている。国や自治体は、こうした不利益を観光による経済的利益と相殺できると考えるべきではありません」(東教授、以下同)

「迷惑行為」「マナー違反」を伝える

 観光客には非日常ゆえの開放感があり、「今しかできない」という「機会の限定性」が加わると、欲望を抑えきれなくなり、自己中心的で享楽的な行動をとる傾向がある。SNS上での「承認欲求」もそれに拍車をかける。

「そうした観光客特有の心理が働く、ということを念頭に置いて対策を講じる必要があります」

 東教授が注目するのは昨年5月、富士河口湖町が人気の撮影スポットから富士山を撮れないように、目隠しの「黒い幕」を歩道に設置したことだ。

「『黒い幕』の写真はネットに出回り、海外メディアも伝えた。町民が怒っている。観光客がここで行っていることは『迷惑行為だ』というメッセージが明確に伝わったのではないか」

 美瑛町の「シラカバ並木伐採」も同様にインパクトのあるメッセージになったはずだという。雪原に横たわる白い幹の映像は国内外で報道された。

「マナーの啓発や注意喚起に加えて、場合によっては『あなたたちがやっていることは迷惑行為だ、マナーの悪い人は来ないでくれ』という強いメッセージを発信することも対策のひとつです」

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観光立国の理念に立ち返れ