日本語ネイティブのコメディアンが英語で「日本人あるある」を話し、外国人観光客から笑いを取る──。そんな濃い英語が飛び交うコメディーバーで「プチ留学」はいかが。AERA 2025年2月3日号より。
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「日本人は子どもの頃、英語の教科書で毎日のようにナンシーに挨拶します。『私は太郎です。アンドユー? 私は元気です。アンドユー?』。でも私はこの挨拶をまだ使ったことがない。人生でまだナンシーに会ったことがないからです。今日ここに、ナンシーはいますか?」
以前は日本でプロの芸人をやっていたショータさんが英語でそう問いかける。残念ながらナンシーはいなかったが、約60人の観客で満席だった会場はこれでまたドッカンドッカン、ものすごい盛り上がりだ。
ここは渋谷にあるスタンダップコメディーを楽しめるバー、その名も「Tokyo Comedy Bar」だ。スタンダップコメディーとは、たったひとりでステージに立ち、客席とやりとりしながら笑いを取るアメリカ発祥のコメディーのことをいう。
スタンダップコメディーというとブラックジョークが満載のイメージ。でも実はしっかりタブーはあり、とくにこの店では、テーマなどに関して細かいルールが定められている。そのためか、初心者にもわかりやすい「あるあるネタ」も目立つ。
「プチ留学の感覚」で
この店のオーナーは、ゲーム会社の社員という本業を持つ40代のイギリス人、BJ・フォックスさん。スタンダップコメディーが好きすぎて、2022年に出したこの店で、自らステージに立つことも多い。
BJさんによると、観客の8割は外国人観光客。残りの2割が日本人で、ネットフリックスなどの動画配信で英語のスタンダップコメディーにハマってライブを見に来る人もいれば、英語が飛び交うバーへ、「プチ留学の感覚で」(BJさん)通う人も少なくないという。
ちなみに自分の英語力は、TOEIC500~600点程度の中高生レベル。そんな英語初級者がスタンダップコメディーを楽しむコツは、第一に「アルコールをひっかけること(笑)」とBJさんは言うが、何人かのスタンダップコメディーを見るうち、アルコールなしでも演者のおしゃべりのリズムから、笑いどころ、耳を傾けるべき話のポイントなどがわかってくる。