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 デヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)とベンジー(キーラン・カルキン)はいとこ同士。二人は祖母の遺言で彼女の故郷ポーランドで“ホロコースト・ツアー”に参加することに。空気を読まないベンジーにデヴィッドは振りまわされるが──? 第82回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞した映画「リアル・ペイン〜心の旅〜」。主演でもあるジェシー・アイゼンバーグ監督に本作の見どころを聞いた。

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 2008年に妻とポーランドを旅行し、僕の叔母がかつて住んでいた家を見つけたときから「もし戦争がなかったら僕はここに暮らしていたのかもしれない」と考えるようになりました。いつかここで映画を撮りたいと思い、ネットで「ホロコースト・ツアー(昼食付き)」いう広告を見つけて「これだ!」と思ったんです。本作はフィクションですが自伝的な部分も多く含まれています。撮影中に僕の家族を知る人々や現地でユダヤ人の遺産を守る活動をする方々との素晴らしい出会いがあり、ポーランドの市民権を取得しました。

 監督をしつつ演じるのは奇妙な体験ではあります。僕はまず自分の演技を見るのが好きじゃないんです。今回も自分の出演シーンは基本見ずにカメラマンと事前に準備を重ねて撮りました。ベンジー役のキーラン・カルキンとの仕事は経験したことのないものでした。彼は事前のディスカッションやリハーサルをしたがらず、現場で僕が何か言おうとすると「どこか行って」って言うんです!(笑)。でも彼の演技は素晴らしく、もう彼にすべて任せることにしました。

ジェシー・アイゼンバーグ(監督・脚本・製作・出演)Jesse Eisenberg/1983年、米ニューヨーク生まれ。「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)でアカデミー賞主演男優賞ノミネート。31日から全国で公開(c)2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

 なぜそこまで自分のルーツについて考えるのか。僕はいま安全でまずまず良い生活をさせてもらっているにもかかわらず「自分は惨めな人間だ」という思いを抱いてしまうんです。おそらく自分に「人生の意味」が欠落しているからだと思います。僕の祖先はつらい経験のなかでも生きる意味を感じていたのでは?といつも考える。そこから物語を紡いでいます。

 劇中にルワンダ虐殺を逃れたエロージュという青年が出てきます。実は同名の友人の経験をそのまま描いています。歴史的なトラウマはユダヤ系のコミュニティーだけの話ではない。世界中で起きていることだと示唆したかったのです。

(取材/文・中村千晶)

AERA 2025年2月3日号

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