講書始の儀に臨む天皇、皇后両陛下と長女の愛子さま=2025年1月10日午前10時、皇居・宮殿「松の間」
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 新年の皇室行事のひとつ、天皇、皇后両陛下と皇族方が学問の第一人者の講義を受ける「講書始の儀」が、1月10日に皇居・宮殿であった。服装史学が専門の武田佐知子・大阪大学名誉教授は「古代の衣服と社会・国家・国際関係」について説明。儀式は厳粛な雰囲気のなかで進んだが、ユニークな解説に皇后雅子さまや両陛下の愛子さまが思わず笑みをこぼす場面もあった。

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「正倉院には、東大寺の写経生が着た、麻で出来た袍と袴(上着とズボン)が残っています」

 宮殿「松の間」に、講義をする武田さんの声が響いた。

 ふと、雅子さまの口元が緩んだのは、8世紀の東大寺で写経をしていた下級官人の制服、「浄衣(じょうえ)」について武田さんが説明していたときだった。

「汗と汚れにまみれた彼らの衣服は、1年以上も着たきりで、臭くて仕方がないが、替えがなく、洗濯もままならず、みんなで交換要求を出したという史料も確認されています」

 それまで真剣な表情で講義に耳を傾けていた雅子さまだったが、資料をめくっていた手を止めて、ほほ笑みながら武田さんを興味深そうに見つめた。

 天皇陛下も何度も深くうなずき、すこし離れて着席していた愛子さまも、わずかにほほ笑んだ。

 厳粛な儀式ではあるが、ユニークな描写を交えた武田さんの講義に、雅子さまや愛子さまも思わず口元が緩んでしまったようだった。
 

「臭い衣服」に、雅子さまも思わず笑顔

「講書始の儀」では毎年3人の専門家が講師を務め、それぞれの持ち時間はおよそ15分。

 宮殿での講義では触れる時間がなかったが、雅子さまたちの興味を引いた下級役人の「制服」のエピソードには続きがあるという。

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