大リーグなど米スポーツ界で定着しているダイナミックプライシング。大谷翔平選手が出場した昨年のワールドシリーズでもチケット価格の急騰が話題になった(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
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 AIを駆使した「ダイナミックプライシング」があらゆる価格を決める時代が近づきつつある。一方で、分刻みで価格が大幅変動するシステムには功罪を指摘する声も。空前の物価高が続く中、「適正価格」の模索が続く。AERA 2025年1月27日号より。

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 アエラでダイナミックプライシングに関する意見を募ったところ、賛否は分かれた。

 Jリーグのチケットを購入している大阪府のパート女性(54)は「バックスタンド上層部で7千円の時もあった」と指摘した上で、「試合によって入場者数の差もあるし、仕方ないだろうが、出費は痛い」と吐露。ホテルの予約で使った埼玉県のピアノ教師の女性(57)は「高くすれば、それだけ混雑が緩和されるのでいいのでは」と理解を示す。東京都の会社員男性(40)も「需要が増えれば値段が上がるのは当たり前。供給者は収益を増やせるし、需要者は混雑緩和になるなら良いこと。デメリットは特に思い当たりません」と好意的な受け止めだ。

 一方、プロ野球のチケットを購入している東京都の会社員男性(57)は「導入前と比較して価格は上がったように感じられる」とし、「購入者側がメリットを感じられるのか若干疑問」と嘆く。ホテルや航空機、東京ディズニーランドで使う東京都の会社員男性(35)は「企業の収益は増えるのだろうが、金持ちが貧乏人を排除する合理的な仕組み」と批判。価格が高くても払える一部の人が快適なサービスを受けられる企業側の利益優先のシステムとの認識だ。

オアシスの公演で苦情殺到、英国当局が調査に乗り出す

 海外では昨年、ダイナミックプライシングによる混乱が相次いで報じられた。世界的人気ロックバンド「オアシス」の再結成ツアーで、英国・アイルランド公演のチケットをダイナミックプライシングで販売したところ、値段が急騰。英BBCなどによると、英国公演で135ポンド(約2万6千円)の券が355ポンド(約7万円)に跳ね上がったり、アイルランド公演でも券によって4倍以上になったりした。このため苦情が相次ぎ、英国当局が調査に乗り出す騒ぎになった。

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固定価格の時代が終わろうとしている過渡期