新年を祝う宮中の伝統行事である「歌会始の儀」が22日、開催された。今回のお題は「夢」。読み手のその時の心理が現れる和歌。過去の歌会始の和歌を読み解いた記事を振り返る(この記事は「AERA dot.」に2024年2月4日に掲載した記事の再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。
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皇居・正殿で1月19日、天皇、皇后両陛下主催の歌会始の儀が執り行われた。歌会始は、同じ題で和歌を詠む天皇と人びとが結びつく場でもある。今年は「和」という題で、天皇陛下は出会った人びとの笑顔を、皇后雅子さまは長女愛子さまの成長の喜びを詠んだ。天皇家の歌の御用掛である永田和宏さん(76)が、天皇陛下が皇后雅子さまに「あるもの」を譲ったというエピソードを明かした。
「皇后陛下にお譲りになってはいかがでしょうか」
昨年の冬、永田さんは天皇陛下へのメールで、そんなメッセージを送った。ほどなく届いた陛下からの返事は、もちろん「よろこんで」といった内容だった。
永田さんは、陛下と雅子さまの仲睦まじさが伝わるようだと、陛下とのやり取りをにっこりと笑顔を見せて振り返った。
このとき陛下が雅子さまに「譲った」のは、和歌だ。
天皇をはじめ皇族方は、新春の宮中行事である歌会始の儀のための和歌を年末までにつくり終え、和歌の御用掛である永田さんとやり取りをする。
和歌の「ご相談」というと、対面で向き合っての指導をイメージするが、以前からファックスでのやり取りも珍しくなかった。格式を重んじる宮家では、侍従が皇族方の和歌を書いた紙を歴代の御用掛に届けることもあったが、コロナ禍以降は感染防止のためにメールでのやりとりも多くなったという。
陛下は、今年の題の「和」に沿って3首の和歌を詠んだ。そのうちの1首は「平和」という言葉で「和」を詠みこんでいた。
ところが、雅子さまの和歌も「平和」を用いており、両陛下で「おそろい」になってしまったのだ。
そして歌会始の日。披講された陛下の「御製」は、陛下が訪問先で出会った人びとの笑顔に接することで、ご自身の心が和んだ気持ちを詠んだものになった。
をちこちの旅路に会へる人びとの笑顔を見れば心和みぬ