たとえば01年に1人区(改選定数1)となった鹿児島選挙区では、立憲民主党は、引退を宣言した自民党の尾辻秀久前参院議長の三女で秘書を務めた朋実氏を推薦すると決定。自民党の公募に落選した朋実氏を立憲民主党に入党させ、他の政党の支援が得やすいように「無所属」とした。
また立憲民主党は熊本選挙区で、昨年の衆院選で東京7区に日本維新の会から出馬して落選した小野泰輔前衆院議員に秋波を送っている。小野氏は前熊本県知事の蒲島郁夫氏の東大教授時代の教え子で、蒲島前知事の下で副知事を2期経験した。20年の東京都知事選に出馬して、61万2530票を獲得した。その時に海城高校の同窓である柳ケ瀬裕文氏や音喜多駿氏の協力を得たことで、小野氏は日本維新の会から21年の衆院選に出馬して当選した。
森山裕幹事長の求心力にも影響しかねない問題
このように立憲民主党は、注目候補となりそうな人材の登用に努めているが、全てが順調に運んでいるわけではない。立憲民主党の打診に対して小野氏は態度を保留中で、鹿児島選挙区では支援を期待していた国民民主党は独自候補を擁立する構えだ。
なお鹿児島選挙区については、自民党が公認した園田修光前参院議員の他、県議会議長も務めたベテラン自民党県議の外薗勝蔵氏も出馬意欲を示しており、混戦模様だ。衆院鹿児島4区を地盤とする自民党の森山裕幹事長の求心力にも影響しかねない問題であるため、こちらの動きにも注目する必要があるだろう。
実際に鹿児島県内での自民党の凋落は著しく、昨年の衆院選で自民党が小選挙区で当選したのは、4区の森山氏の1人のみ。1区の宮路拓馬衆院議員は比例で復活したものの、自民党は2区と3区で完敗した。自民党は2区の三反園訓衆院議員を入党させる方針を1月18日に正式決定。衆院での過半数割れを少しでも補おうという魂胆だが、焼石に水の状態だ。
こうした傾向が夏の参院選で顕著に表れた場合、自公が衆参両院で過半数割れする可能性が出てくる。実際にマドンナブームに沸いた1989年の参院選で、自民党は現有の改選議席69議席から36議席へと、ほぼ半減させた。これが1993年の政権交代の土台になったことは、歴史が証明している。