「インフレが進んでいるから、預金をしていたら必ず損」というイメージを一方的に広めるのは、やや行き過ぎではないだろうか。

 老後の不安から投資を始める人が多い現状を考えると、かなり長期的な運用を見据えている場合が多いはずだ。ならば、銀行側も長期の定期預金を用意し、高めの金利を設定することはできないだろうか。

 先ほど触れたように、銀行が30年国債を購入すれば2.3%の利回りが得られるわけで、それを原資にすれば預金者へもある程度還元できそうなものだ。

「預金で損をする」というよりは「銀行が預金者に十分な金利を払っていない」ことが問題の根幹ではないか。とりわけ長期金利が上向いている今こそ、預金者に対して配慮を示す好機だと思う。

 本来、銀行は預金を集めて企業や個人に貸し付け、預金との金利差で利益を得るビジネスだ。しかし自ら「預金していたら損になる」とばかりに投資を勧めるのは、不適切にもほどがあると言わざるを得ない。

 インフレ時代には投資を学ぶことも大事かもしれないが、安心できる貯蓄の選択肢も提示してほしいと思っているのは僕だけだろうか。今の長期金利上昇が、預金者にとって少しでもプラスに作用するように、金融機関の真摯な対応を期待したい。

AERA 2025年1月27日号

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