米ロサンゼルス近郊で拡大した山火事では、セレブたちの手択が立ち並ぶパリセーズ地区にも火の手が及んだ=2025年1月15日(写真 AP/アフロ)

 一方、家が全焼し全てを失った避難民たちはショック状態で、FEMAのサイトにアクセスする余裕がないどころか、免許証や出生証明書など何一つ持ち出せなかった人たちがほとんどだ。車が焼けて移動手段がない人も。

 そんな人たちのために、FEMA職員は各避難所を訪れて、タブレットを使って支援金の申請を助けていた。「大統領が大規模災害宣言を出した日から60日以内に申請するのが期限だから注意して」と避難民に伝えていたのは、FEMA職員のジョエル・ブライトさんだ。つい最近までフロリダでハリケーン被災者の担当をしていたという。

 トランプ政権になって支援金の支払額や受給条件が変わることはあるかと聞くと、「僕たちは公務員で、政治とは関係ない。ただ不安なら、ここ数日以内に、政権が代わる前に申請しておくことを勧める。写真や追加書類は後からアップすればOK」と話す。

「政治の話は避けたい」

 300人近い人々が寝泊まりする避難所で温かい食事を提供しているボランティアのロニー・コスタさんは、ボストンから飛行機で援助に駆けつけた。

「自分が20年間暮らしたLAは故郷も同然。助けになるなら何でもやりたい」と言う。家を失った人たちを励まし、昼食を手渡す彼にも、政権が代わることをどう思うか聞いた。

「政治の話は今は極力避けたいんだけど」と言いながらも「トランプは、避難民に惨めな思いをさせないと思うから大丈夫だ。心配いらないよ」と言う。

 また、赤十字ボランティアのジョン・スティンソンさんは、火災発生から24時間以内にカンザスから派遣されてLA入りし、避難所の運営をしていた。

「米国の赤十字は1881年に看護師のクララ・バートンが設立して以来、ずっと一般人の寄付が財源だ。大統領が誰になろうと、財源はびくともしない。歴代の大統領がホワイトハウスを去った後も我々は被災地にいつでも最初に駆けつけるしね」

 今回、彼はベッド数20床の小さな避難所に派遣され、シャワー設備のある施設に避難民を輸送するバスをチャーターし、臨床心理士の手配もしていた。

 このLA火災で赤十字は縦横無尽の活躍を見せた。前述のファイナーさんが連れていた愛犬に「ペット専門ボランティア」が話しかけ、ファイナーさんは「まるでホテルかと思った」と言った。LA住民たちは衣類や食料を避難所に寄付していた。

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いまは政治ゲームしている余裕はない