震災関連の人事への疑問は同じ頃、記者からも出ていた。斎藤が元県民局長の告発文書を「嘘八百」と断じた24年3月27日の会見でのことだ。

記者:来年、震災30年を迎えるにあたって創造的復興フォーラムなども考えていると思いますが、人事異動を見ると、危機管理部系の幹部が軒並み変わっているように見えます。何か意図があれば教えてください。

知事:現在の防災監は退職となるので、副防災監をスライドする形としました。継続性はあると思っています。池田副防災監は、防災・危機管理のエキスパートでもあり、その対応をしっかりとやってもらいます。新たに唐津教育次長を危機管理部長とします。(…)震災30年や能登半島地震を含めて、来年度検討会もやっていくので、(…)継続性と重厚な布陣、両方やったつもりです。

 体制は維持しており問題ないと斎藤は言うのだが、職員からはこんな声が漏れる。

「池田頼昭防災監は2年前に陸上自衛隊から来られた方で、確かにエキスパートですが、県内市町の事情をどこまで把握し、連携できるか。逆に、経験がないのに、いきなり危機管理や防災部門の管理職になった人も多い。全体の人数は変わらなくても素人ばかりだと、実際の災害時に機能するのか」

 防災や被災者支援に長く関わる研究者やNPO関係者も口々に言う。

「知事が防災や復興関係の会議やシンポジウムに出てこないので、直接議論したり、考えを聞く場がなくなった」

「震災30年事業は一過性のイベント的なものばかり。フェニックス共済の加入促進やコミュニティ防災など地道に取り組むべき課題は多いのに」

「震災の教訓をネット動画で発信するのはいいが、若者受けばかり意識し、専門的知見や助言が取り入れられない」

 表面上は整っていても、本質には届かない。震災の犠牲者に思いを馳せ、防災や復興を進めるという公人としての使命感や気概が感じられない。

 それはまるで、斎藤が語る言葉のように、私には思える。

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熱量のない言葉で被災地は背負えない