若さと健康を保つためには、適度な運動を継続する

 適度な運動が体にいいことは疑う余地のない事実であり、多くの人が知るところであろう。「寝たきり」になることがなぜ問題視されるかといえば、体を動かさないと脳の機能も低下するからだ。やはり人間、「地に足がつく」ということが大事なのではないだろうか。足の裏には脳を刺激する回路があるといわれているが、足の裏をしっかり地面につけて体を動かすことが、脳を若く保つためにも有効なのである。

 東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター研究所)が、東京都小金井市の住宅の高齢者に対して、ライフスタイルや寿考命が生活の自立性に与える影響について、10年間に及ぶ追跡調査を行ったところ、運動習慣のある人は、ない人と比べて男女とも高い生存率を示しているが、その差は統計学的には誤差の範囲であった。

 一方で、運動習慣のある人はない人と比べて基本的な日常生活動作能力(ADL)の低下が現れにくいことが認められた。それは、高齢者の運動習慣は余命を延ばすことだけでなく、生活機能と自立性の維持に貢献しているということである。

 同調査では、運動の種類はゴルフ、水泳、テニス、ゲートボールなど多岐にわたり、それらのほか軽い体操や散歩も含めると、約80%の高齢者が運動をしていた。

「厚生省長寿科学研究」の一環として、全国7カ所の「健康増進センター」の利用者約7000人を対象とし、運動や食生活などと健康維持の関係について調査した結果では、60歳以上の人の約60%が運動をしており、多くの人が週2回以上運動していた。

運動は虚血性心疾患や高血圧のリスク、死亡率をも減らす

 継続的に運動をしている人と、していない人に、5項目の体力検査を行った研究では、運動をしている人たちはしていない人たちに比べ、男女とも各年齢層において3~5倍も体力が高く、体力レベルの高い人は低い人より健康状態が良いという報告も得られている。

 継続的に運動することは、体力を増進させ若さを保つのに有用なことのほかに、心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患や高血圧のリスク、死亡率などを低減させ、長寿につながることも示されている。日本だけでなく、海外でも同様の結果を示す多くの研究報告がある。

次のページ