40歳ごろから、忘れっぽくなる「良性健忘」は生理的老化だが…

 実際には生理的な老化現象なのか、病的な老化現象なのか、見極めが難しいこともあるだろう。脳の老化を例に解説しよう。脳の老化にも、生理的なものと病的なものがある。

 生理的な老化現象は「良性健忘」と呼ばれる、いわゆる「忘れっぽくなること」だ。一般的に40歳を過ぎるころから、記憶力や記銘力が低下する。テレビで見た、あの人の名前が思い出せない」「今日会ったあの人、名前何だっけ」ということや、「眼鏡をどこに置いたか思い出せない」「買ってきてと言われたものを忘れた」といった物の置き忘れ、買い忘れなどが日常的に起こるようになる。

 これは、人によって程度の差はあるが、誰にでもみられるもので、時間が経過するほどに進行・重症化することはない。ちょっと困ることはあっても、生活に重大な支障をきたすようなことはほとんどないことといえる。

アルツハイマー型認知症、白内障や骨粗鬆症は治療が必要に

 一方、病的な老化現象と考えられるのが、アルツハイマー型などに代表される認知症だ。アルツハイマー型認知症でも、最初に現れるのは、物忘れや記銘力の低下など、良性健忘と似た症状だ。そのため、最初は「年のせいかな」と思う人がほとんどだろう。

 しかし、生理的な老化現象と異なるのは、症状が進行し、いずれは社会生活が送れなくなることだ。

 改めて述べると、生理的な老化現象は、個人差はあるが誰にでも起こるもので、病気ではない。だから、あまり気にせず、「そういうものだ」と受け入れる気持ちを抱くことも大事だと思う。一方で、病的な老化現象は病気であり、治療が必要である。アルツハイマー型認知症も、白内障や骨粗鬆症も、治療をすることが必要な病気だ。そして、老化によって起こるこれらの病気は、早期発見し、早期に治療することで進行を遅らせることや、改善ができるものもある。

次のページ