あとがきでは家族について触れている。本を読むきっかけになった9歳上の姉の自死。母の病死。2019年に92歳で逝った父とは折り合いが悪かったというが、エッセイの中の父とのやりとりは笑いとほろりとした感情を運ぶ。
「私、父にそっくりなんです。見た目も性格も。父も短気だったし子ども時代はガキ大将で多動気味だったらしい。私もいまならおそらくADHD(注意欠如多動症)の一種と診断されているでしょう。診断も名付けも、周囲の理解もないあの時代に親はよく育ててくれたなあ、と思います」
この本はとにかく若い人に読んでもらいたいと豊崎さん。
「こんな人でもなんとかこの年まで生きているんだ!と思って安心してほしいですね」
先達の書の体(てい)を見せつつ「先週居酒屋で店員さんに『声が大きい、静かに!』と怒られた」とぼやく豊崎さん。抱腹絶倒な人生は終わらない。
(フリーランス記者・中村千晶)
※AERA 2025年1月20日号