型を用いずにガラスの成形をする「宙吹き」(ちゅうぶき)製法を用いる「肥前びーどろ」は、江戸時代から100年以上続く伝統技法。しかし、一人前になるのに8年かかるほど習得が難しく、県内で「肥前びーどろ」をつくれるのは、いまや副島硝子工業だけになっているという。
「専門の職人は4人と小規模ではあるが、コツコツとできることを続けています」(副島さん)
佐賀県で昨年に開催された国民スポーツ大会(国スポ、旧・国体)の入賞者らに贈られたメダルの表面には、「SAGA2024」の「0」の部分に「肥前びーどろ」がはめ込まれ、知名度がすこし上がったという。
「経済的にも厳しい世の中ですから、食器にお金をかける余力が家庭になくなっているように感じます。しかし、8000円の器には手が伸びづらくても、アクセサリーならばお客さまの心理的なハードルも下がるようで、購入してくださる方も増えました」
「佳子さま効果」は永続するものではないが、それでも職人にとっては「次に進むきかっけをもらった」と話す。
誤解を恐れずに言えばと前置きしつつ、副島さんは「佳子さまは、われわれ伝統工芸業界のインフルエンサーです」と言って、ほほ笑んだ。
「皇室が気にかけてくれる」
昨年10月、国スポのために同県を訪問した佳子さまがつけていたことで、やはり話題になったのが、有田焼のイヤリングだ。
磁器の発祥の地として知られる有田。町内にある陶磁文化館を訪問した佳子さまの耳には、白い磁器に手描きの絵付けで薔薇などを描いた有田焼のイヤリングがあった。
金が華やかな彩りを添えたこの品は、町内に工房を構える「器とデザイン」が製作する品。工房代表の宮崎雄太さんは、この日をこう振り返る。
「佳子さまが訪問された日から、『eb2(いびつ)』シリーズのこのイヤリングだけが、北海道や東京、大阪などバラバラな地域で売れ始めた。不思議だなと思ったら佳子さまがつけてくださっていたのを、ネットニュースで知りました」