トランプ氏の目指す方向と、株価への影響は。
「今、米国に住んで米国国籍を持っている国民に良質な雇用を作り出し、賃金を上げることがトランプ氏の目標です。企業活動が活発になり、雇用が拡大し、毎月入ってくるお金が増えれば、経済全体にとって大きなインパクトとなります。当然、米国株式市場にも良い影響が見込めるでしょう」
いいことばかり聞くと逆に不安になる。懸念点はないのか。
「輸入関税の引き上げは、米国国内の物価上昇につながります。不法移民を追い返し、ビザ付きの移民も制限したら、労働力が足りなくなりますよね。そうなると物価上昇、賃金上昇もあいまってインフレがさらに加速してしまいます」
これが長期金利の上昇にもつながっていく。米国経済にとっても、米国株式市場にとってもマイナス材料となる。
トランプ氏のリスク
「賛否両論ありますが、対中国の半導体および半導体製造装置の輸出規制も、あまりやりすぎると半導体のサプライチェーンが不安定になります」
半導体価格が上昇すると苦しくなる企業が増える。株価にはマイナスに働く。
「トランプ氏は歴史的経緯に関係なく、国際関係を交渉と損得勘定だけで解決しようとする雰囲気を感じます。それが行きすぎると、世界全体で地政学的リスクが増大します」
両面の意見を聞いたが、当然正確なところはわからない。米国株一辺倒で投資するより、今は米国株64%でも残り36%は他国の株が少しずつ入っている「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を積み立ててほったらかすのが無難な気がしてきた。
(経済ジャーナリスト・向井翔太、編集部・中島晶子)
※AERA 2024年12月2日号