AERA 2025年1月13日号より
この記事の写真をすべて見る

 物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2025年1月13日号より。

【写真】田内学さんはこちら

*  *  *

「スーパードラえもんの価格はいくらだと思いますか?」

 あるトークイベントで、会場からこんな質問が飛んできた。質問者は10歳の小学4年生、ではない。46歳のおじさん、他ならぬ筆者自身である。

 ジャーナリストの田原総一朗さんが開催する「田原カフェ」というイベントで、ゲストに来られた安野貴博さんへ質問したのだ。安野さんは、33歳という若さで昨年の東京都知事選挙に立候補されていて、AIの技術を駆使して誰も取り残されない社会を目指されていた。

 僕は長い間、日本の金融市場で働いてきたが、大学時代の研究分野は、安野さんと同じ自然言語処理だった。今でいうAIの研究に近い。そこで冒頭のような質問をぶつけてみたのだ。

 もしも、ロボットが進化して、どんな問題も解決してくれるロボット、つまりスーパードラえもんが完成したとする。食事の用意や住居の建設、病気の治療まで何でもできるロボットだ。エネルギーも材料も自分で調達する。このロボットの価格は果たしていくらになるのだろうか?

 普通に考えれば、とんでもない金額だ。1億円、いや1兆円かもしれない。しかし、1台あれば、新たにもう1台を生産することもできる。では、新しく作った1台をいくらで売るのかと考えてみる。

 スーパードラえもんがどんな願いも叶えてくれるなら、お金は必要なくなる。そうなると、無料で譲ることも可能ではないだろうか。

次のページ