日本経済転落の一因は財務省の偏った考え方にあるのではないか……これをネットではカルト教団をモジる形で「ザイム真理教」と表現され、2023年には経済評論家の森永卓郎氏による解説本がヒットした。果たして「ザイム真理教」は日本経済に負の影響を与えているのか? 小説家・榎本憲男さんによるコラム。
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2024年11月の衆院総選挙の後、議席を4倍に伸ばした国民民主党が予算案のキャスチングボートを握る立場に躍進した。国民民主党が票を伸ばしたのは明確な経済政策を打ち出したからと思われる。基本路線は減税だ。また、この政策はアベノミクスのバージョンアップ版だとも言える。アベノミクスで放たれることがなかった2本目の矢を、財政政策ではなく減税政策によって放ち、市中に回るマネーを増やそうというもくろみである。
これに対して、マスコミが「財源はどうするんですか」と玉木雄一郎党代表や榛葉賀津也幹事長に詰め寄った(いまも財源はどうするんだというツッコミは入り続けている)。そして、この事態は、慌てた財務省が各マスコミに講義(入れ知恵)し、それをマスコミがうのみにしてそのまま質問しているのだ、とネットでは盛んに語られている。実際、玉木雄一郎氏も2024年10月末のぶらさがり会見で、「林官房長官が7.6兆円の減税が見込まれ、特に高所得者ほど減税の適用度が大きくなると言っていたが」(大意)と質問された折り、「まあ、従来の財務省的な発想ですよね」と苦笑していた。つまり、財務省に入れ知恵されて話しているという含みを持たせた発言をしていたのである。
森永卓郎氏の著書『ザイム真理教』が大ヒット
こんな具合に「さては財務省が……」と疑う声が大きくなりはじめたのは、経済評論家・森永卓郎氏の『ザイム真理教』がヒットしたことが大きい。「ザイム真理教」は造語である。「ザイム」はもちろん財務省。これに、カルト宗教団体の名をかけたものだ。財務省がカルト集団化し、日本政府の経済政策をゆがめていると告発した本書は大きな話題を呼んだ。