ゆっくりと参賀者を見渡していた愛子さまの視線が一瞬止まり、ふふっとほほ笑むと隣の雅子さまに顔を向けて話しかけた。おふたりは、視線を東庭に戻しつつもやわらかい表情で言葉を交わし続ける。
ふたたび参賀者の前列あたりに視線を戻した愛子さまは、にっこりと笑顔を見せ視線の先と会話をするように、二度うなずく仕草をみせた。
愛子さまと雅子さまの目線の先には何があったのか。
視線をたどってゆくと、白地に赤い文字で表には「愛」、裏面には、「♡」と書かれたうちわを振る女性たちの姿があった。
世田谷区から一般参賀に来たという姉妹は、「愛♡」うちわについて、こう話した。
「何かメッセージをと考えていたところ、思いついてゆうべ作りました」
「♡」は、愛子さまの「愛」をシンボル化したもの。他の人の邪魔にならないよう高くは上げず、没収されないように小旗サイズに収めたという。
姉妹は、愛子さまが目線を留めてくださったように感じた、と喜びを語った。
また、佳子さまもひとりひとりと目線を合わせるように、端から端まで丁寧に手をふり、秋篠宮さまと紀子さまも遠い位置にいる参賀者に届くように高い位置で手を振った。
この日、皇居に集まった人びとを見ると外国籍らしき家族連れや海外からの観光客の姿がますます増えた印象も受ける。
陛下は即位した当初から、「国民」という限定した言葉よりは国籍を問わない表現を好まれ、多くの人へメッセージを伝え続けてきた。
この日も、新年一般参賀の「おことば」をこう結んだ。
「年の始めに当たり、我が国と世界の人々の幸せを祈ります」
(AERA dot.編集部・永井貴子)