都構想の住民投票で反対多数の結果を受けて会見する当時の大阪維新の松井代表(右)と吉村代表代行(左)=2020年11月

吉村氏は辞める覚悟を決めた?

 都構想の最初の住民投票があった15年当時、吉村氏は衆院議員だった。大阪市長だった橋下氏が住民投票の否決を受けて「政界引退」した際に、後継として大阪市長選に出馬し、当選。19年に大阪府知事選に当選し、知事に転じている。20年の都構想の住民投票の際は府知事として陣頭指揮を振るったが、否決されたことで、

「都構想再挑戦を僕がやることはない」

 と否定していた。今回の都構想の再検討は、前言を翻すものだ。

 藤川氏はこう見る。

「維新の新代表となった際、吉村氏は、維新は全国的な政党でなくてもいいという趣旨を話している。大阪中心の国政政党という方向に舵を切ったという意味でしょう。その背景に大阪都構想がある」

 吉村氏は代表就任会見で、

「人生、ずっと政治をやるのではない。政治の世界にいる間は走り切る」

 という趣旨の発言をしていたが、藤川氏はこれに注目して、こう話す。

「大阪都構想の住民投票での敗北で、橋下氏、松井氏と創立者の2人が去っていった。吉村氏も政治には未練がないタイプ。もう一度、住民投票をやって負ければ辞める。勝てばそれでよしと決意したための前言撤回ではないのか。ただ、大阪都構想によって維新が国政で分裂することになれば、都構想にとってもマイナスになりかねない」

 党勢低迷する維新にとって、大きな賭けとなる大阪都構想の再検討。吉村氏の決断は吉と出るだろうか。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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