「ニーコや、よくお聞き。おまえは、わたしとこの世を結び付けてくれている最後のリボンなんだよ」
生と死を描き、救いのある成熟した作品を創っている柳美里らしい連作短篇集。一匹の捨て猫ニーコとその6匹の子猫たち、そしてその飼い主となる人間たちを描く。毒だんごで殺されたり、もらわれてもすぐに衰弱死したりするなど猫にも波瀾万丈あるのだが、その飼い主となる人間たちにもまた様々なドラマがある。引きこもり、妻の死、孤独。悩み、苦しみながら、猫との暮らしに救われる人間たち。
人間の都合で捨てられ、殺処分される猫たちは、そんな人間にただただ寄り添い、人間と生を結び付ける「リボン」となる。幸せな「ねこのおうち」はまた、われわれにとっても幸せな「おうち」であることに気づく、優しい作品。
※週刊朝日 2016年9月2日号