
「AERA dot.」に最近掲載された記事のなかで、特に読まれたものを「見逃し配信」としてお届けします(この記事は12月10日に「AERA dot.」に掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。
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日本一有名な卓球選手、水谷隼さんに独占インタビュー。現役時代の本音、引退後の今……包み隠さず語った。【本記事は後編です/前編はこちら/アエラ増刊「AERA Money 2024秋冬号」から抜粋しています】
水谷さんはSNS界隈でも有名人だ。誹謗(ひぼう)中傷に毅然(きぜん)として立ち向かう姿が共感を呼んでいる。
8月1日に、自身のXアカウントに送られてきた悪口の数々を公表し、閲覧件数は約1800万回に上った。「消えろ!」「お前嫌われてんだよ」など、目を覆いたくなる言葉。
無数に連なる「死ね」。これらをアップして、水谷さんは「こんなのいっぱい届いたら誰でも心病むよ…」と添え、法改正やルール変更を訴えた。
同月23日には、批判的なコメントばかり寄せる投稿者に「実名もしくは顔出しで話し合いしましょう」と呼びかけた。
著名人と一般人との対決の構図をいさめる茶々も入ったが、水谷さんは
「嫌いな人にネチネチ嫌がらせをしているとしか思えないので、やめてくださいと言っているだけです」
と一歩も引かず、多くのフォロワーから拍手喝采を浴びた。
「試合に負ければ『もう引退しろ』『日本代表のくせに、税金の無駄』みたいな投稿やDМ(Xのダイレクトメッセージ)が殺到します。
勝ったら勝ったで、相手国のファンやそれ以外の国の人から……それこそ世界中からたたかれる。そんなことが続いてきました。
東京五輪のときは1日100件を超えていたと思います。今まで表に出していなかっただけ。でも、少しずつ心の傷は増えていくんですよ」
ネットリンチに耐える
さっきまで晴れやかだった表情を曇らせながら、水谷さんは続ける。
「10年以上ずっとがまんしてきました。
でも、自分だけでなく他のアスリートも誹謗中傷にさらされているのを見て、がまんしているのはよくない、それでは何も変わらないという結論に至りました」
アスリートや芸能人への誹謗中傷はこれまでもあった。昭和の時代は事務所への電話や手紙が主だったが、SNSは悪口雑言を届けるハードルを下げた。
受け止める側は「ネットリンチ」に耐えるばかりというのがつい最近までの実態である。
