2029年4月13日、小惑星アポフィスの地球最接近時の位置を示したシミュレーション=米倉昭仁撮影

 13年、ロシア・チェリャビンスク州の隕石落下では、直径約20メートルの小惑星が地球に衝突したといわれている。上空で爆発した際の衝撃波によって南北約200キロ、東西約100キロの建物に被害が出た。約1500人が負傷した。

 1908年にロシア・シベリアで発生した「ツングースカ大爆発」の原因は、直径50メートルほどの天体の衝突だったと推定されている。東京都とほぼ同じ面積の約2000平方キロにわたって樹木がなぎ倒された。

くすぶる衝突の可能性

 アポフィスに対する緻密な観測から、「2029年に地球に衝突する可能性」は05年ごろに一度、否定されている。だが、その後も「衝突」の可能性が度々指摘されてきた。

 08年、ドイツの13歳の少年が、「29年の地球接近時に人工衛星と衝突する可能性があり、それによって36年の接近時に地球と衝突する確率が上昇する」と指摘した。

「欧州宇宙機関(ESA)は少年の計算が正しいと認めた、と報道されたことから、また騒ぎになりました」

 NASAが、「アポフィスは人工衛星の密集地帯から離れた空間を通過するため、衛星と衝突する可能性は低い」とアナウンスして、騒ぎは収まった。

 今年8月には、カナダ・西オンタリオ大学の天文学者、ポール・ウィーガート氏が、29年までにアポフィスが別の小惑星と衝突すると、軌道が変化する可能性を示唆した論文を学会誌に発表。論文によると、アポフィスが別の小惑星との衝突によって大きく方向を変える確率は100万分の1以下、地球にとって危険な方向転換の確率は10億分の1だという。

「29年にアポフィスが地球に衝突する可能性はゼロではありませんが、限りなくゼロに近いといえるでしょう」

 アポフィスは29年4月13日、地球をかすめるように最接近する。地球の引力によってアポフィスの軌道が変化するほどだ。最も観測条件のよい欧州では、夜空を横切る3等星ほどの明るさのアポフィスを肉眼で見られるという。

直径100メートルの小惑星が落下すると直径1.6キロのクレーターが生じる=浅見敦夫さん提供

先月も小惑星が衝突

「人類は運がいい。小惑星の衝突による壊滅的な被害を免れてきました」

 そう浅見さんは言う。だが、「大災害が起きるのは時間の問題」だとも話す。

 これまでも、ごく小さな小惑星が地球に衝突することは度々起こっている。

 たとえば、小惑星「2024 XA1」は24年12月3日に発見され、翌日にはロシア・バイカル湖の北東約800キロの上空で大気圏に突入した。直径0.7~1.5メートル。発見から衝突までの時間は約10時間だった。

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