“首ポキ”施術で命を落とすこともある(写真はイメージ/GettyImages)
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 12月上旬、タイでマッサージを受けた後に体調が悪化し、死亡する事例が相次いでいることが発覚した。報道によると、タイ保健省は「マッサージと死亡に因果関係はない」としているが、死亡した20歳のタイ人女性は、首を激しくねじり音を鳴らす施術を複数回受けていたという。首を急激に旋回する頚椎(けいつい)への手技は危険を伴うため、日本では厚労省が注意喚起を行ってきた。しかしSNSや動画投稿サイトでは、“首ポキ”などと称する危険な施術動画が数多く出回っている。最悪の場合死に至る“首ポキ”が横行する理由を専門家に聞いた。

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 インターネット上で“首ポキ”と検索すると、整体師やカイロプラクターが利用客の首を勢いよくひねる施術動画がずらりと表示される。多くの動画では「めちゃくちゃ鳴りましたね(笑)」「いい感じで動いてくれましたね」などと満足そうな客や施術者の様子が映っており、「一撃必殺頸椎ボキボキ整体」「首をタオルで巻いて引っこ抜く」といった過激なタイトルのものも目につく。

 しかし、1991年に厚労省(当時の厚生省)が各都道府県の衛生担当部あてに出した通知書「医業類似行為に対する取扱いについて」には、こんな記載がある。

<頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要がある>

 矯正したい部位に素早く力を加えるスラスト法は、カイロプラクティック療法の手技の一つだ。だが、正しい知識や技術を持たずにスラスト法を試みる施術者が後を絶たず、重大な事故につながる危険も指摘されてきた。

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スラスト法は「F1マシン」