もし母がすでに他界していて、父が家を残して亡くなっていたら原則としてこの「小規模宅地等の特例」は使えなかった。姉も私も持ち家があり、別の場所に住んでいるからだ。子どもに持ち家がある場合、この特例は適用外になる。
税理士で公認会計士の神谷有子さんは言う。
「相続人が賃貸に住んでいれば、『小規模宅地等の特例』の適用要件を満たしやすい。相続人に持ち家があれば親の家を使わない可能性が高いため、特例の適用が厳しくなります。私自身も税理士になる前に相続の経験をしましたが、事前にこの特例を知っていれば、自分の住まいを買わなかったかもしれません。それくらい魅力的な特例です」
「これを維持して大丈夫かな」
「空き家問題」も考えておきたい。娘2人(姉と私)は同居していないので、母が亡くなれば実家は空き家となる。庭には母の大好きな柿や梅の木があり、春に秋にと実をつけて私たち家族を和ませてくれた。紫陽花もキレイに咲いた。枯れ葉を集めて家族4人でたき火をし、アルミホイルに包んだサツマイモを入れて焼き芋を作った。おいしかったこと、楽しかったこと、幸せだったこと――。
そんな思い出の家を手放すのは「絶対に嫌」で、私はつい最近まで家を守り切ると周囲にも自分にも言い聞かせてきた。しかし相続税を支払った後に、またやってくる固定資産税。光熱費に火災保険料や修繕費など。これからかかる費用を考えると「これを維持して大丈夫かな」という気になってきた。