スマイル社との裁判に臨む石丸志門氏(撮影/上田耕司)
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 旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の創業者であるジャニー喜多川氏から性被害を受けたと訴えている「ジャニーズ性加害問題当事者の会」(今年9月に解散)の副代表を務めた石丸志門氏(57)は、補償金額をめぐり同社から提訴された。スマイル社が提示した補償金額と石丸氏の希望額に大きな隔たりがあるためだが、石丸氏の高額請求には世間から批判の声も上がっている。石丸氏の真意はどこにあるのか。第一回の口頭弁論(12月20日、さいたま地裁)を前に、石丸氏がAERA dot.のインタビューに応じた。

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 石丸氏の自宅に、さいたま地裁から封書が届いたのは11月5日のことだった。

「裁判所の封筒で郵便が届き、中を開けたらSMILE-UP.からの訴状が入っていました。訴状は22ページにも及び、細かく主張が書かれていました。僕は弁護士をつけず、裁判に臨むつもりです。訴状の1項目1項目について、すべて自分で答弁書を作りました」

 スマイル社は今年2月、石丸氏に補償金1800万円を提示したが、石丸氏が求める金額とは大きな隔たりがあったという。その後の調停でも、両者の溝は埋まらず、スマイル社は1800万円を超える損害賠償責任はないことの確認を求めて、さいたま地裁に提訴したと報じられている。

 石丸氏のスマホには、苦心して書き上げた答弁書が入っていた。これまでの補償交渉の経緯を石丸氏はこう振り返る。

「今年2月8日、SMILE-UP.の設置した被害者救済委員会の弁護士と初めて面会しました。5月頃に行われた3回目の面会でも、僕の思っていた額とは大きな隔たりがあったので、平行線で終わりました。すると、SMILE-UP.側の弁護士が『裁判所での調停にしてもらいたい』と切り出してきたんです」

 当初、石丸氏は調停に持ちこむことには難色を示した。

「調停だと時間もかかるし、金額が下がるのではないかと聞くと、SMILE-UP.側の弁護士は『それは調停委員が決めることだから』『費用は全部ウチが出しますから』と。30分くらい説得されたので、じゃあ調停にしましょうと同意したんです」

 さいたま簡易裁判所で行われた調停で、石丸氏が最初に要求した金額は18億4568万32円だった。これが報じられると、SNSでは「金額がケタ外れ、無茶苦茶すぎる」「慰謝料にも相場や判例がある」「他の方々との差がつきすぎる」など批判の嵐が吹き荒れた。

「僕も18億円からもっと減額した案も出しましたが、結局、調停では折り合わなかった。調停委員から『このまま話が平行線だと訴訟になるかもしれない』と言われましたが、『僕はあくまで調停で話をつけたい。裁判は望んでいません』と答えました」

 そうした曖昧な状態が続いていたが、前述のように、今年11月5日にスマイル社から訴状が届き、「いきなり訴訟になってしまった」(石丸氏)という。石丸氏は憤慨した様子でこう続ける。

「昨年10月、SMILE-UP.は記者会見で被害者の救済には時効や証拠も考慮せず、『法を超えた補償をする』と約束していたのに、いきなり訴訟に踏み切るのは乱暴すぎると思います」

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