睡眠の悩みを解消するための情報は、これまでにも、さまざまなメディアでたくさん紹介されてきました。でも……。
・8時間眠りなさい
・できれば「22時」に眠りなさい
・規則正しく栄養管理の行き届いた食事を摂りなさい
・睡眠時間を確保することから1日をスケジューリングしなさい
「……いやいや、そんなの無理だから!」
そう思ったことはありませんか?
いわゆる「睡眠の常識」と、ビジネスパーソンの実態はかけ離れているのです。そこで本連載では、医師とビジネスパーソン両方の視点と経験を併せ持つ著者が、新刊『一流の睡眠』から、現実的かつ具体的な「睡眠問題解決法」を教えます。
今回は、オリンピック観戦に備えて、是非覚えておきたい睡眠術をお伝えします。
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いよいよ、スポーツ好きにはたまらないイベント、4年に1度のオリンピックが開催。日本選手をはじめ、一流のアスリートたちのパフォーマンスを堪能したいところですが、今回の舞台はブラジルのリオ。地球の裏側です。リアルタイムで観戦しようとすれば、ぶっ続けで徹夜し続けなければならない競技日程が組まれています。観戦翌日に寝不足で仕事のパフォーマンスを落とすようでは、目も当てられません。
そこで今回は、オリンピックを楽しみつつも、夜更かしのダメージを最小に抑えるコツをお伝えします。
私は医師であり、医療機関の経営コンサルタントでもあります。私を含め、周りの医療機関従事者が実践している「当直明けメソッド」が、オリンピック観戦翌日の、寝不足によるパフォーマンス低下を防ぐヒントになるはずです。
医師や看護師などの医療従事者は、泊まり込みの「当直勤務」や「夜勤シフト」があります。当直明けであろうと、翌日に緊急の患者さんがあれば、当然ながら対応しなければなりません。そんな状況下で、当直明けでもパフォーマンスを低下させないために、我々は2つの工夫をしています。
●90分の戦略的な仮眠で乗り切る
まず、翌日のパフォーマンス維持のための必須条件の1つが「仮眠」です。「人間の睡眠サイクルは90~100分程度」「レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す」という話を聞いたことがある人も多いでしょう。入眠直後にだんだん深い眠りに入り、また浅い眠りへ戻ってくるまでが1サイクルです(図1)。
この「深い眠り」を少しでも確保しておくと、翌日の眠気は幾分解消されます。なぜなら、脳が休まるのは深い眠りのときと言われているからです。たとえ仮眠でも、深い眠りを確保できれば脳は休まるわけです。
また、仮眠から目覚める時間は、眠ってから90分ほどで巡ってくる「浅い眠り」を目安にするとスッキリ目覚めやすいでしょう。浅い眠りのときは脳も体も活動する時間帯なので、ここで目覚めれば、脳も体も無理なく起きられる可能性が高いのです。