歌詞を書く時は嘘をつかずに自分の気持ちを言葉にしていますが、歌う時はまた別の向き合い方をしています。例えば、明るい歌詞の曲を明るく歌いすぎないようにしたり、暗い歌詞を逆に明るく歌うことがあります。人が悲しいことを笑いながら話している姿に切なさを感じます。人はプライドや気遣いがあるので悲しさをそこまで人に大っぴらに明かさなかったりする。自分が好きなアーティストの歌っている姿を見ても、とても切ない曲を少し微笑んで歌う姿に感銘を受けます。そう歌うことで歌い手と聞き手の間に溝がなくなり、気持ちが共有できる気がするんです。
音楽は直接生活には必要ないものだとしても、音楽によって心が救われたり元気になってもらえるのであれば、歌というフィクションを一生懸命伝えたい。どこまでいっても100%の正解は見つかる気はしないのですが、その時々の自分が正解だと感じることを試していきたいと思っています。
自分が100%納得のいく歌を歌えている実感はありません。模索をし続けているからこそ面白い。EXILEの一ファンとしてカラオケでEXILEの曲を歌っていた時が一番楽しく歌を歌えていたのではないかと思います。僕は釣りが好きなんですが、ただただ楽しんで釣りをやっている僕と違って、プロの方は生活がかかっているので釣れないととても苦しい。「どんな職業でもそういうものなんだよな」と改めて思いました。
(構成/ライター・小松香里)
※AERA 2024年12月16日号より抜粋