バイオリニスト・高嶋ちさ子さんの父とダウン症の長女・未知子さん(写真:高嶋さん提供)

 玉井さんによると、先天性心疾患の有無にかかわらず、成人になってから心臓の弁逆流を起こしたり、最悪の場合は僧帽弁逸脱症になったりすることもあるといい、手術後も定期的な受診が大切で、玉井さんは「サポートファイル(ブック)」の利用も勧める。

 病歴や処方薬、手術記録などの医療情報だけでなく、日常生活やコミュニケーションの方法などさまざま記入するもので、医療や福祉の利用の際に役立つ。日本ダウン症協会のホームページから無料でダウンロードできる「わたしの健康パスポート」もいい。

「親御さんもお年を召していくと記憶もおぼろげになっていきます。ファイルで常に更新していくことで万一に備えられます」(玉井さん)

 合併症だけでなく、ダウン症のある人には身体的な老化徴候が早く起きやすい。

「ざっくりといえば、40歳のダウン症の方は健常者の50歳ぐらい。50歳になると、70歳の健常者ぐらい。外見だけでなく体力も、認知機能も低下します」

 背中は丸くなり、老人性色素斑(いわゆるシミ)などが出現する。年齢とともに、残尿出現頻度も増える。さらに成人期以降は、難聴や白内障、糖尿病、嚥下障害などさまざまな疾患が出てくる。40歳くらいになるとアルツハイマー病が出現することもある。

「ダウン症のある方の認知症の早期発見に役立つとされているのが『DSQIID(知的障害者用認知症判別尺度)』といわれる、家族や介護者が記載して判定できるものがあり、若年期は2~3年に1回は判定し、これを基準値として、35歳を超えたら毎年行って比較すると良いと思います」(玉井さん)

手に職をつけさせたい

 諫早市のみさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家診療部の医師、近藤達郎さんは、長くダウン症患者と向き合ってきた。これまで診た患者数は1千人以上にのぼる。

「ダウン症候群の方は、自分の感情に素直で、デリケートで明るくて笑顔も素敵。多くの方が元気で穏やかではつらつとされています。愛情を持ってご家族が支え、地域の社会資源を使いながら、年齢を重ねるにつれそのつながりを強くしていけばきっと幸せに過ごせると思います」

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