
ただ、翌23年9月の関東大震災の混乱で、結婚のための良子女王の調度品の一部が焼失するなど混乱もあった。
また、結婚の準備を報じる記事には、「国産品奨励の思し召しによって(略)装身具は御木本商店の工場に製作を下命された」(1924年1月14日付朝日新聞)と、装身具が国内産で製作されたことが書かれている。
この皇太子妃の第一ティアラは、ひときわ大きく豪華だ。
先の宝飾業界に従事する人物も、皇太子妃の第一ティアラは、宝石の大きさこそ皇后のティアラにおよばないが、手間をかけた装飾で特別さを感じさせる宝冠だと話す。
「宝冠自体の高さもあり、トップに戴くダイヤは沢山のダイヤで取り巻くことで煌びやかな存在感を放っている。透かし彫りで唐草文様を表現した地金をはじめとする凝った装飾からは、将来皇后になる方のための宝冠を作る、という当時の意気込みを感じます」
この皇太子妃の第一ティアラは、いまは皇嗣妃の紀子さまに受け継がれている。

愛子さまがお使いのティアラは優雅で可憐なデザイン
独特のデザインが目を引くのが、2016年のベルギー国王夫妻を招いての宮中晩餐会や、17年のルクセンブルク大公を招いての晩餐会で雅子さまの顔を輝かせていた「皇太子妃の第二ティアラ」だ。
こちらは、20世紀初頭に流行した幾何学模様と直線が特徴的なアール・デコ調のデザインのティアラ。トップには幾つもの真円の真珠が輝き、中央にはひときわ大きな逆ドロップ(しずく)型の真珠があしらわれている。
「アール・デコ調のティアラを着けた雅子さまの姿は、オリエンタルな魅力にあふれていました。また、英国のバッキンガム宮殿で開かれた晩餐会では、日本の美が表現された重量感のある皇后の第二ティアラを堂々と魅せておられた。宝飾に携わる立場としても実に嬉しいお姿でした」(前出の人物)
そして、天皇、皇后両陛下の長女、愛子さまは、ティアラの新調をまだ控えており、叔母の黒田清子さんから借りたティアラをお使いだ。
清子さんが昭和の時代につくった「内親王のティアラ」は、皇后や皇太子妃のティアラとも違う魅力がある。地金の唐草文様は細く繊細なラインで表現され、カスミソウなどの小花が咲くような可憐なデザイン。日本の職人らしい優雅さにあふれるこのティアラは、花のようにほほ笑む愛子さまによくお似合いだ。
ダイヤと真珠が煌めく皇室のティアラは、人びとを魅了してやまない。
(AERA dot.編集部・永井貴子)

