
そして、2019年の天皇陛下の即位に伴う一連の宮殿での儀式やパレードで雅子さまが着用されていたのが、「皇后の第一ティアラ」だ。
実はこのティアラは日本製ではなく、ドイツの職人の手による宝冠だ。
1887(明治20)年2月15日付の朝日新聞の記事には、「皇后宮御冠(こうごうぐうのおんかんむり) 我皇室より独逸国伯林府御用金工師レオンハード及フィーゲルの二氏に命じて製造せしめられたる皇后宮の王冠を始め御装飾具(略)」とある。
ブリリアント型の皇后の第一ティアラは、60個のダイヤモンドをちりばめたドイツ製の宝冠で、9つのダイヤの「星」をトップに戴くデザイン。ダイヤの星飾りは取り外して花簪にすることも可能で、中央には21カラットのダイヤがあしらわれているという。
記事には、「百四十個の宝石を組み合わせたる御襟飾(おんえりかざり)並びに純金の御腕飾(おんうでかざり)の如き何れも華麗荘厳極りなきもの」として、装身具のネックレスと純金のブレスレットに140個の宝石が用いられたともある。
先の宝飾業界の関係者はこう話す。
「第一ティアラは一石一石が大きく、デザインも欧州の宝冠の色が強い。特に中央のダイヤはひときわ大きく、他のティアラとは別格です。まさに皇后にふさわしいティアラです」
「皇太子妃の第一ティアラ」は仏大使が交渉
やはり豪華さが目を引くのが、「皇太子妃の第一ティアラ」だ。
1993年6月9日、皇太子さま(当時)との結婚に伴い宮殿で行われた一連の儀式やパレードで雅子さまが着用されていたティアラで、晩餐会にもよく着用されていた。
1922年8月3日付の朝日新聞には、昭和天皇(当時、皇太子)と香淳皇后(結婚前は、久邇宮良子女王)の結婚の準備に伴うティアラの準備について報じられている。
「東宮妃として良子(ながこ)女王殿下の冠らせらるることとて多分仏蘭西へ御注文相なるべく是等の御交渉は駐仏石井大使に御下命ありしや(略)」と、仏国に注文するにあたり駐仏大使に交渉を任せた当時の様子が記されている。